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     「雨のドモ五郎」を読んで 
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になります。
                      都留文科大学教授 田中 実

    ペンネームイエス小池くんに会ったのは、彼が高校一年生のとき、
    私は二年間目黒にある攻玉社高校で彼の国語の授業を担当しました。
    当時、私は大学院の修士課程の学生で、初めて教壇に立った年でし
    た。 彼は並外れて絵が上手、その当時から漫画家になる希望を持っ
    ていたようです。

    小池君のヤングジャンプ青年漫画賞準入選作品「雨のドモ五郎」に
    ついて何か文章を書いてほしい、との依頼を受けましたので、その
    感想を少しだけ述べてみます。

    この作品は文学研究で言えば、一種の私小説の形をとっています。
    四十歳の漫画家志望の主人公が苦節二十三年、 アシスタントを続
    けながらついにS社新人賞を受賞し、デビューする話です。

    ストーリーはきわめて明快、シンプルに過ぎるようなストレートな話で
    すが、 この物語は副編集長の針剛二の狂気によって、主人公のドモ
    五郎が化けるところに核心があります。

    健常者の針剛二はドモ五郎を全く認めていません。
    しかし、狂人になるとドモ五郎をほめたたえ、雨の中、病院から抜け
    出し、いかに漫画が素晴らしいかをドモ五郎に熱狂的に語り、それが
    ドモ五郎に伝わっていきます。

    ドモ五郎は才能が評価されてプロ作家になったのではなく、狂人の
    夢がドモ五郎を変身させるのです。
    狂気を孕んだ漫画への愛と夢、それがドモ五郎には必要だった・・・。

    若い漫画家志望の皆さんがこれをお読みになると、その素朴過ぎる
    ストレートなテーマにどんな感想を持たれるか、私には見当がつき
    にくいのですが、
    一つだけ言えることは、何事かを成すには、ある種の限度を超えた
    情熱や思いこみ、それが必要だということを教えてくれている、と
    思います。
    ドモ五郎には狂人の針が必要なのであって、まともな編集者ではあ
    りません。 適切なアドバイスで技術力が高まるというようなレベル
    を超えて、限度を超えた夢や希望が必要なのです。

    小池君が若い漫画家志望の人達とネットでこうしたコミュニケーシ
    ョンを始めたというのは、私にはその気持ちがよくわかるような気
    がします。
    小池君は賞もとり、単行本も出版したのですが、今は自分が創作す
    るのではなく、アシスタントしかやっていません。
    私は彼がもう一度、創作することを心の底から希望しています。

    何故彼が創作を一旦やめて、アシスタントを続けているのか、
    創作への夢は本当は断ち切れていないのに、何がその情熱を奪い
    去っているのか、 そのことこそ社会派の漫画家イエス小池の再登
    場の契機になるはずです。

    プロレタリア文学の代表的作品、小林多喜二の『蟹工船』を下敷き
    にした百ページ読みきりの漫画『覇王の船』をヤングジャンプに発
    表し、書き下ろし単行本『サイコホスピダー』を出版した直後、
    創作を断念するに至った彼の経緯が、イエス小池の新作になるので
    はないか、と私は今夢見ています。

                                  2005年 5月22日
田中教授(左)と私(右)
1980年代八王子にて
2色指定で掲載された
「雨のドモ五郎」1P目
「雨のドモ五郎」2P目
「雨のドモ五郎」3P目
「雨のドモ五郎」4P目
漫画画像は全て
1987年、集英社の
ヤングジャンプ31号より
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